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「子どもを守る」とは (毎日新聞大阪本社学芸部・山崎友記子)
山崎さんは、2005年1月〜2006年3月の横矢の「子どもを守る」という毎月1回の連載のご担当でした。
掲載紙については、こちらでご紹介しています。


 子どもの危険回避研究所所長の横矢さんには、05年1月から今春まで2年以上に渡り、「子どもを守る」を連載していただきました。
 この間、残念ながら、子どもの命が犠牲になる事件や事故が相次ぎました。連載スタートのきっかけは、奈良の女児誘拐、殺害事件でしたし、今パッと思い出すだけでも、広島、栃木県で相次いだ小1女児殺害事件、京都の塾講師による殺害事件、埼玉県ではプールの吸水口に女児が吸い込まれて死亡する事故なども起きました。

 横矢さんには、こうした時々の事件や事故を踏まえ、対応策などを説明していただきましたが、決して読む人の恐怖感や不安感をあおることなく、一時の雰囲気に流されることもなく、いつも地に足のついたお話をして下さり、本当に感謝しております。

 われわれマスコミは、大きなことが起きると、何か目新しい対策や、傾向を追い求めがちです。そこを横矢さんは、防犯対策や安全策に100%はなく、小さな工夫を積み重ねて、子ども自身に力を付けさせることを繰り返し説いて下さいました。連載は、読者に話題を提供するだけでなく、私も記者として、一人の親として、多くのことを考え、教えていただく機会になりました。

 私には、今年、小学3年になる娘がいます。娘が入学する直前に、奈良で1年生の女の子が犠牲になり、広島や栃木で亡くなった女の子は、みんな娘と「同級生」でした。事件はとても人ごとは思えませんでしたし、すくすく大きくなる娘を見るにつけ、亡くなったお子さんの親御さんたちの悲しみは、いかばかりか、想像するだけでも胸が痛みます。
 娘を入学時から「鍵っ子」にさせていましたし、事件も相次ぎ、親として、特に防犯については不安がいっぱいでした。公私混同ですが、そうした不安や心配は、横矢さんにたくさんのアドバイスをいただいて、何とか乗り切ってきました。通学路チェックや安全マップ作りも、原稿で書くだけでなく、実際に親子で取り組みました。地域の人に顔なじみになってもらうことも、昼間働いているとなかなか難題でしたが、努力してきたつもりです。

 さて、「子どもを守る」とは直接関係ないかもしれませんが、最近、娘を通じた子どもたちの様子を見ていて、少し気になることがあります。
 我が家には、娘の友人たちがよく遊びに来ますが、午前中から遊んで、お昼になっても家に帰ろうとしない子が時々います。「お昼ごはんの時間でしょ? お母さんが心配するよ」と私がたずねると、「お昼ごはん作ってくれないからいい」とか「お昼ごはんはいらない」という返事がかえってきてびっくりします。
 親に行き先を告げてから遊びに来ているようですが、昼を過ぎてずっと我が家にいても、その親から「○時には帰して下さい」とか「どうしていますか?」といった問い合わせや電話はかかってきたためしがありません。子どもに尋ねても生返事です。
 まだ低学年の娘が、何時間もどうしているのか分からなくても、その親は気にならないのでしょうか。何かあったらどうするのだろう?と疑問でいっぱいです。これは防犯以前の問題ではないでしょうか?
 食べることは生きること、ということを信条にしている私には、子どもが何を食べているか、ということに関心がない親が「子どもを守る」ということに関心を持つだろうか? と感じてしまいます。

 防犯や安全対策に過剰な反応を示す親がいる一方で、子どもの行動に無関心な親たち。かけがえのない子どもの命を守っているために、考えるべき課題はまだまだありそうです。