尼崎市 小1男児虐待殺人事件 情報


事件概要および関連ページ

8月13日、尼崎市の運河で小1男児の遺体がポリ袋に入れられて見つかった事件で、母親の知子容疑者と義理の父の剛士容疑者が、死体遺棄、傷害致死の容疑で逮捕されました。警察の調べでは、2人は8月1日、神戸市の児童養護施設に預けていた小1男児を自ら引き取っておきながら、粗相をしたり、施設に帰りたいと訴えたことなどに腹を立て、自宅で殴る蹴るの暴行を加えて8月7日ごろ、死亡させたということです。また亡くなる数日前から食事を一切与えていなかったことも分かっています。

児童虐待という犯罪 毎日新聞インタラクティブの「毎日の視点」というコンテンツの中の特集記事です。この事件の現在までの経緯はもちろん、近年の子どもの虐待事件についての情報が毎日更新されています。1998年からのバックナンバーも閲覧することができます。
児童相談所における児童虐待相談等の状況報告 厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課が平成13年6月21日に報道発表した資料です。過去5年の児童虐待に関する相談処理件数の推移やその内訳がわかります。

参考資料

朝日新聞 2001年08月10日 朝刊より
少年院に入っている男女の半数、父母らから虐待 法務省アンケート

 少年院に入っている男女(14〜22歳)に法務省がアンケートした結果、約半数が「過去、父母らから虐待を受けたことがある」と答えた。特に女子の場合、「非行に走ったのは虐待が原因」と答えた人が多い。
 法務省法務総合研究所が昨年7月、在院1カ月〜半年程度の約2300人を対象に初めて調査した。全在院者のほぼ半数にあたるという。
 虐待を(1)身体的暴力(2)性的暴力(3)1日以上食事をさせてもらえなかった――の三つに分類して尋ねたところ、一つでも経験があると答えた人は50%いた。加害者をみると、男子の場合、実父が7割を占め、女子では実父、実母がそれぞれ4割だった。
 家族から虐待された経験のある女子の半数以上は「虐待を受けたために非行に走るようになったと思う」と答えた。

朝日新聞 2001年08月18日 朝刊より
児童虐待死5割増 加害は実母最多、次ぐ内縁の夫 【大阪】

 虐待で児童が死亡する例は今年に入って増えている。7月には名古屋市南区で小学2年の女児が、「しつけのつもりで」という母親らから殴るなどの虐待を受けて死亡。5月にも東京都町田市の4歳の保育園児が、母親の交際相手から「なつかなかったから」として暴行を受けて死亡した。
 警察庁のまとめでは、1〜6月に摘発された児童虐待事件のうち、死亡した児童は31人で前年同期より5割増えた。殺人14件、傷害致死13件、保護責任者遺棄致死3件、重過失致死1件。虐待事件の加害者は実母が最も多く、実母の内縁の夫が次ぐ。
 厚生労働省によると、昨年11月に児童虐待防止法が施行されたこともあり、昨年度全国の児童相談所に寄せられた児童虐待の相談は1万8804件と、前年度の約1・5倍に上った。殴る・けるといった身体的虐待が49・7%、食事を与えないなどの放置が36・5%だった。
 同省は「少子化、核家族化で、子どもと一対一になる閉そく感が増したことや、経済状況が深刻化したことなどの要因がからんでいる」とみる。
 こうした事態に、大阪府は今年度から大阪市を除く府下7カ所の全児童相談所に「虐待対応課」を新設、4〜6人の専従職員を配置した。神戸市の児童相談所も4月から主に児童虐待に対応する「家庭支援係」を新設。奈良県も児童相談所に専従班を設けた。

朝日新聞 2001年08月16日 夕刊より
親のケアできていたか 専門家はこう見る 尼崎・小1遺棄【大阪】

 児童虐待をめぐり、家庭や児童相談所などの役割について専門家に聞いた。

 <「親子連鎖を断つ会」を主宰する東海女子大文学部の長谷川博一教授(臨床心理学)の話> 
 一時帰宅をなぜ認めたのか、と批判するのはたやすいが、その判断は非常に難しく、現場は常に悩んでいる。児童虐待では何よりも親のケアが大切であり、児童相談所や施設側と親との間で、どの程度胸襟を開いて話し合いができていたのかがポイントだ。
 子どもを虐待することでバランスが保たれていた家庭は、子どもがいなくなるとバランスを崩す。親は子どもを返してほしいという欲求が強くなり、「愛していたことがよく分かった」といって強く子どもの返還を求めてくる。しかし、帰宅を認めると虐待が再開するケースが多い。
 児童虐待の要因は親の生い立ちにかかわっていることが多い。今回も、そこまで探らなければ問題の根は見えてこないだろう。

 <児童虐待の事例調査や防止活動をしている子どもの虐待防止ネットワーク・あいち(CAPNA、本部・名古屋市)事務局長の岩城正光弁護士の話>
 養護施設に保護していた子どもを家庭に帰す時は、最も虐待が起きやすい危険な状態の一つ。親が子どもの帰宅を望んでいても、子どもは家庭に帰ると保護者がどこまで受け入れるかの反応を見ようと、必ず赤ちゃん返りを起こす。だだをこねたり、すねたりする「退行現象」と呼ばれるもので、高校生でも指しゃぶりを始めたりする例がある。
 これは、保護者にとっては非常に負担になり、新たな虐待を生む。
 その親の負担を軽くするために、施設から一時帰宅する際に親の研修や毎日のモニタリングが必要になる。今回、1週間以上の措置解除をするのであれば、施設側は当然、センターに通告すべきだった。親のカウンセリングもなく一時帰宅を許可したのは、判断が甘かったのではないか。

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